小渕優子問題の闇
2014-10-26
その他
脚光を浴びていた女性閣僚の辞任によって、安倍政権は早くも窮地に立たされている。特に一時は幹事長候補と噂され、改造内閣の目玉とも言われていた小渕優子元経済産業大臣の辞任は大きな衝撃となった。
青山繁晴氏によれば、小渕優子氏の政治資金問題の背後には、大きな闇があると言う。小渕氏の辞任直後、群馬県中之条町の折田謙一郎町長が「小渕優子氏は何も知らないし、悪くない」と言って町長を辞任した。折田氏は「私が作成した収支報告書のせいで小渕代議士や支援者に迷惑をかけた。外部の専門家を入れた調査委員会にすべてを説明する」と述べたが、まだその収支報告の内容は明らかにされてない。小渕優子氏も、「私も大いに疑問です」「わからないことが多すぎる」などと発言しており、一部からは他人事のようで無責任だという批判も浴びた。青山氏によれば、観劇会を初めとする不透明な収支は、裏金作りを目的したもので、これは小渕恵三元首相公認の下で作られた仕組みなのだという。そして、この裏金は、政治資金として、折田町長等群馬県の首長や地方議員たちに流れ、これらの人々と小渕恵三元首相は、もちつもたれつの関係にあったのだという。
本来なら、政治資金に対する世間の目が厳しくなる中、小渕優子氏自身が、このような資金の流れをチェックし、不正があれば見直すべきだったはずだ。しかし、父親の代からの恩人であり指南役でもあった人々に対して、厳しいことはなかなか言えなかったのであろう。ましてや30台であった小渕氏が、大先輩である地方議員たちをコントロールするのは、少し荷が重かったに違いない。その点は同情に値する。
そして、青山氏は、もう一つ重要な点を指摘する。今回の内閣改造にあたり、安倍首相は内閣情報調査室を用い、自ら身体検査を行った。そして、このような小渕氏の政治資金に関する情報も事前に把握していた。しかし、小渕氏は旧経世会の平成研究会に所属しており、このような有力派閥はマスコミをコントロールできるので、普通ならこのような情報が漏れるはずがない。その証拠に、小渕氏は麻生内閣で男女共同参画・少子化対策担当大臣だったが、その時には、このような話は表に出てこなかった。それゆえ、安心したのであろう。今回、何故「週刊新潮」によって公表されたのかはわからないが、今回もマスコミはコントロールできると過信したところに、安倍総理のおごりがあった。以上が、青山氏のコメントの概略である。(「アンカー」、「ボイスそこまで言うか」)
青山氏はインテリジェンスと太いパイプがあり、通常のマスコミより深いレベルの解説が聞けるので、筆者はいつも両番組を視聴している。
しかし、今回の事件は、さらに深読みができるのではないかと考えている。
今回に限って有力派閥によるマスコミのコントロールが効かなかった理由については、青山氏自身もわからないと述べている。しかし、筆者の陰謀論的メディアリテラシーからすると、小渕氏問題公表のゴーサインを出したのは、安倍政権自身だったのではないかと推測されるのである。
これは、いくつかの状況証拠による。
まず第一に、筆者が小渕氏問題の一報を知った時、これで消費増税が取りやめになる可能性が出てきたと思った。実際、その後そのような話が取り沙汰されている。そして、安倍総理自身は、元々消費増税には反対だったと聞いている。大臣が辞めることによるダメージと、消費増税によって経済が沈滞したことによるダメージとを比べれば、後者の方が遥かに大きいに決まってるのである。
第二に、小渕氏の所属する平成研究会は、安倍総理の属する清和会とはライバル関係にある。そして、親中国派の平成研究会は、政治思想的に今も安倍総理とは真逆の立場にある。そこのホープであり将来の首相候補とも言われる小渕氏が辞任すれば、平成研究会の弱体化につながり、安倍総理自身にとってもプラスになるのではないか。
第三に、今回スクープした「週刊新潮」は安倍総理とは思想的に近い、いわば安倍政権を支える側のマスコミである。安倍政権を憎悪するマスコミの代表である朝日新聞がスクープしたのとは、全く訳が異なるのである。
どうであろう。あくまで推測に過ぎないので、正しいかどうかはわからない。この種の問題は永遠に葬られる可能性が高いので、恐らく確かめる術はないであろう。しかし、政治には、マスコミにとってアンタッチャブルな世界があるということだけは確かであろう。
ちなみに、田中森一(元検事)著『反転-闇社会の守護神と呼ばれて-』には、安倍家と山口組との深い関係について書かれている。父の安倍晋太郎の頃の話だが、当時は安倍総理も秘書をやっていたのだから、けして無関係だったとは言えないであろう。筆者は、安倍晋三氏が首相になった時、マスコミがこの問題を取り上げるのかと思ったのだが、一向にそれは起こらなかった。しかもこの『反転-闇社会の守護神と呼ばれて-』はベストセラーであり、多くの人が読んでいるはずなのだ。この本を執筆した当時、田中森一氏は逮捕間際で、破れかぶれになっており、何でもぶちまけてやろうという思いが筆致からも読み取れ、出鱈目とは到底思えなかった。しかし、マスコミは、今に至るまで全くこの問題について触れようとはしない。
マスコミ・タブーは確実に存在しているのだ。