メディア関連
・・・90年代に起きたブームは「バブルで踊らされた日本で、欲望世界の対極にある障害者の純粋無垢(むく)なイメージが、人々の共感を呼んだ」と見る。その後も途切れることなく障害者ドラマが作られていることについては「現在も日本の社会は経済至上主義、拝金主義で、バブル崩壊後と基本的には変わらない。だから、その反対にある清らかなもの、天使的なものが求められるのではないか」と話す。一方で、天使的なものとの表現方法は、時代の成熟とともに、徐々に現実に即してきているようだ。・・・
・・・薫には、これらの主人公の人生に漂うはかない影は微塵もなく、この世界にずっととどまり続けようという堅い決意が強く読みとれる。薫がかつて住んでいた世界とは、月世界でも深海の楽園でもなく、この世に実在する養護学校や施設という場所なのである。そして、普通の世界へと1歩踏み出した彼女にとって、そこに戻ることはもはやあり得ない。ゆえに薫は、とどまらない。未来に向かってひたすら走り続けていくのである。いみじくもこの書名は、主人公の前向きで溌剌とした、現在進行形の人生観が表されているのではなかろうか。・・・
・・・知的障害者を天使的存在と見なすイメージは、19世紀初頭、勃興する産業社会に対する危機が叫ばれる中、英国の詩人ワーズワースなどロマン派の人々によってに美し く謳い上げられた。しかし、そのようなロマンチックな障害者像は、20世紀初頭の優生思想に対する防波堤とはなりえず、・・・
全文はこちら ― 立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点