成年後見
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成年後見制度は、平成12年にスタートしました。この制度の趣旨は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者の財産管理や身上監護を、成年後見人等が適切に行っていくというもので、法定後見と任意後見に大別され、両者は、その根拠とする法律も異なります。すなわち、法定後見は従来の民法の禁治産・準禁治産の条項の大幅な改正によるものですが、任意後見の場合、「任意後見契約に関する法律」という新たな法律が作られました。他にも両者に大きな違いがあり、この二つは全く別の制度と考えた方がよいかもしれません。
法定後見は、本人(この制度を利用する人)の判断能力が不十分になってから、家庭裁判所に申立てを行います。(任意後見の場合、判断能力がしっかりしているうちに契約を結ぶので、この点がまず異なります)
申立人は、本人・配偶者を含めて4親等以内の親族、及び区市町村、検察庁ですが、後見人には誰がなってもかまいません。極端な話、隣人に後見人になってもらうことも可能ですが、通常は、親族か、第三者後見と言って専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士)が後見人になります。
また、本人の判断能力の程度によって、後見、保佐、補助という次の三つの類型があり、その概要を表に記します。
後 見 | 保 佐 | 補 助 | |
---|---|---|---|
対象となる方 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 |
申立てをすることができる人 |
本人,配偶者,四親等内の親族,検察官など 市町村長(注1) |
||
成年後見人等 (成年後見人・保佐人・ 補助人)の同意が 必要な行為 |
- |
民法13条1項所定の行為 (注2)(注3)(注4) |
申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民法13条1項所定の行為の一部)(注1)(注2)(注4) |
取消しが可能な行為 |
日常生活に関する 行為以外の行為 |
同 上 (注2)(注3)(注4) |
同 上 (注2)(注4) |
成年後見人等に与えられる 代理権の範囲 |
財産に関するすべての 法律行為 |
申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(注1) | 同 左 (注1) |
一番大きな特徴は、後見の場合、包括的代理権が後見人に与えられるのに対し、保佐の場合、特定の法律行為に関してのみ同意権と取消権が与えられ、それ以外の代理権については本人の同意が必要なことです。また、補助に関しては、すべての代理権について、本人の同意を必要とします。
ちなみ、現在の利用状況(平成17年)は、後見が86%、保佐が9.5%、補助が4.5%となっています。
法定後見は、家庭裁判所に申立てを行い審判が下されることによって開始されます。成年後見がスタートすれば、悪質な消費者被害にあった場合、成年後見人の判断でその契約を取り消すことが可能となります。成年後見制度が一躍脚光を浴びたのが、埼玉県富士見市の認知症高齢姉妹のリフォーム詐欺事件でしたが、この時もし成年後見人がついていたら、あのような被害に遭わずにすんだのです。
また、成年後見人は、財産管理の仕事を行うと同時に、介護保険契約や施設入居契約などの法律行為を本人に代わって行います(身上監護)。
親族が成年後見人になった場合でも、それ以降は毎年毎年、財産目録や収支報告書を家庭裁判所に提出しなければならなくなります。成年後見の申立をしたらおしまいと思っている方がいますので、この点注意しましょう。
任意後見契約は、ご本人がまだ元気なうちに、将来任意後見人になってくれる人との間で交わされます。遺言が死亡した時に備えて本人の意思を書き残しておくのに対して、任意後見契約は、ボケてしまったときに備えて、本人の意思を書面に残しておくものです。
ただ、この契約は、公正証書にしておく必要があります。すなわち、公証人の面前で契約書を作成するので、本人の意思であることが公証人によって確認されます。そして、本人の判断力が不十分になった時点で、この契約が発効しますが、この時、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されます。
法定後見の場合、成年後見人の仕事を家庭裁判所が直接監視するのに対して、任意後見の場合は、任意後見監督人の選任という間接的な方法によって監視することになります。
本人の判断能力が低下した場合、任意後見人は本人の財産に対し大きな権限をもつことになります。ですから、任意後見人が本人の財産を横領したり悪さをしたりしないように、公証人と家庭裁判所という二重のチェック体制がしかれているのです。また、代理権の範囲については、任意後見契約締結時に決めておきます。
( 参考リンク ) 法務省 成年後見制度~成年後見登記制度~