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インターネット陰謀論(8)

2014-09-02
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8. 世界中にクモの巣を張り巡らすな!

もう一つワープロ専用機の復活について提言したい。かつて、OASYS(富士通)、書院(シャープ)、文豪(NEC)等、世界でも類を見ない高性能ワープロ専用機が、我が国において続々と誕生した。しかし、それらはすべて汎用性の高いパソコンに敗北し、21世紀を待たずして姿を消してしまった。しかし、あれから歳月が流れ、再びワープロ専用機の復活を望む声が高まりつつあるのではないか。筆者なども20年前こそ、目新しさもあってパソコンに魅了された口だが、最近はパソコンの不安定な動作に苛立ちを覚えることが多く、特に砂時計が長く続く時には非常なストレスを覚える。そんな折、安定感のあるワープロ専用機の動作に、ノスタルジーがつのりつつある。ワープロ専用機ならウィルス感染の心配もなく、アップデートにもほとんど晒されなくて済むだろう。ワープロ専用機も、最後の頃は、インターネット対応型の機種が出ていた。そういったものなら、ウィルス被害を軽減できる分、かえって今の方が支持されるのではないだろうか。
また、現在、若者を中心にインターネットはスマホや携帯に移行している。ならば、モバイルと連動させることのできるワープロ専用機を開発してはいかがだろうか。すなわち、ワープロ専用機で作成した文書をスマホや携帯で送信したり、スマホや携帯で受診したメールを、ワープロ専用機に保存できるようにするのだ。最近の若者は、キータッチによって素早く文章を入力できるというが、それでも千頁の文書を作成することは不可能であろう。やはりキーボードで入力するのが、人間の生理にかなっている気がする。
それと通信費の節約についてもっと考えるべきだろう。パソコンもモバイルも、メールやインターネットを利用しているのだから、どちらか一つで足りるはずである。筆者の場合老眼もあり、モバイルを中心に利用するのはちと無理があるので、インターネットはパソコンだけとし、携帯はガラ系で通話のみに設定している。
ワープロ専用機にしても、先程のOSにしても、考え方は一緒である。要するに、オンライン接続が可能な部分とそうでない部分に分割するといった発想である。今までIT企業性善説がまかりとおっていたが、そうでないことが明らかになった以上、ユーザーも自分の身は自分で守らなくてはならないのだ。

また、企業にしても、外部とはオンラインでつなぐことは極力避けるようにし、もっとイントラネットを活用すべきであろう。そしてここにも、アナログ的なプロセスを一つ付け加えるのだ。例えば、スタンドアローン型PCを専用室に置き、鍵と記帳によって管理するとか、信用のある者が責任を持ってデータを持ち運ぶといった従来のやり方を復活させればいい。要するに、システムとシステムの間を切断し、その継目には人間やアナログ的プロセスを介在させるようにし、全体を一つのネットワークで結ばないことだ。若干不便にはなるかもしれないが、「おしん」の時代に比べたら何ほどのことだろう。そして、便利さは人間の能力を退化させるといった面もあるのだ。
また、この方法は、危機管理の面からも、有益だと思われる。例えば、ある社員が事務所とパソコン(スタンドアローン)専用室の合鍵を手に入れたとする。機械警備でなければ、夜間事務所に侵入し、合鍵を使ってパソコン専用室に入ってしまいさえすれば、パソコン本体には何のブロックもされていないため、簡単に機密情報を入手することができる。この場合、夜間の侵入さえ成功すれば、証拠はほとんど残さずに済む。
一方、別の会社の社員は、パソコン内部の機密情報にアクセスするためのIDとパスワードを入手できたとしよう。これを使えば、インターネットカフェなどから直接アクセスすることができる。しかし、事件が発覚し捜査の手が及べば、証拠が残りやすいので、逮捕される可能性が高い。
この二つの場合、どちらが犯行に走りやすいかと言えば、恐らく後者だと思う。夜間侵入するのはかなり度胸を要することなので、たとえ客観的リスクは低いとしても、なかなか実行に移すことは難しいはずだ。そのため、見つかった場合のリスクは高くても、多くは後者の方法を選ぶだろう。このようにアナログ的プロセス(鍵を借りて記帳してから、パソコン専用室に入る)を介在させた場合、それが心理的な面での抑制効果につながるが、反対に、遠隔操作だと、実際にはかなりリスクが伴う場合であっても、全能感が助長され、つい犯罪に走ってしまう傾向があるように思う。

インターネットは、“World Wide Web”という思想の下に誕生した。しかし、この思想はそもそも間違っていたのではないか。クモの巣を世界中に張り巡らすなどと言う幻想は打ち捨てて、実際のクモの巣の如く、建物ごと、あるいはエリアごとに巣を張り巡らすようにした方が良いのだ。つまり、システムとサブシステムの間を遮断し、その間に人的プロセスを介在させ、システムの端末には、空っぽのパソコンがあるだけにする。公開情報には自由にアクセスできるようにし、一方非公開情報に関しては、クローズドなネットワーク内のみに存在するといった形にするのだ。そうして、インターネット空間を、機密情報という観点からして価値の低いものにすれば、ウィルスの蔓延も自ずと沈静化していくのではなかろうか。ネットワーク化が進んでいない北朝鮮は、サイバー攻撃に一番強いと言われるが、それに見習えばよいのだ。
インターネットは性善説によって成り立っている世界だが、様々な経験を経てもなお、そのことがいまだに信じられていることには驚かされる。ネット上の攻撃や中傷は当初から予想されていたが、それが現実となった今も、性善説が揺らいでいる様子は見られない。そして、この技術を世界中に広めようとしたアメリカ政府自体に、重大な疑惑が生じているにも関わらずだ……。
インターネットが壮大な社会実験であることは確かである。しかし、その是非を含めて、根本的に見直す時期にそろそろ来ているのではないか。18世紀イギリスで、ラッダイト運動という産業革命に反対する機械打ちこわしの蜂起が起こった。IT産業に対してもネオラッダイトという思想が、アメリカのロバート・ライシュによって提唱されている。個人的心情としては、ネオラッダイトに共鳴したいところだが、それが実際には起こらないことは歴史が証明している。ならば、汚染され異常化したサイバースペースを、少しでも浄化し正常化することしか、道はなさそうである。
最後に、そのことについて考えてみたい。


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