建設業許可(建設業更新)

 建設業とは、元請、下請に関わらず、建設工事を請負う業者のことを指し、以下の28業種に分かれています。(カッコ内は、略号)

1.土木一式工事(土)2.建築一式工事(建)3.大工工事(大)4.左官工事(左)
5.とび・土工・コンクリート工事(と)6.石工事 (石)7.屋根工事(屋)8.電気工事(電)
9.管工事(管)10.タイル・レンガ・ブロック工事(タ)11.鋼構造物工事(鋼)12.鉄筋工事(筋)
13.舗装工事(ほ)14.しゅんせつ工事(しゅ)15.板金工事(板)16.ガラス工事(ガ)
17.塗装工事(塗)18.防水工事(防)19.内装仕上工事(内)20.機械器具設置工事(機)
21.熱絶縁工事(絶)22.電気通信工事(通)23.造園工事(園)24. さく井工事(井)
25.建具工事(具)26.水道施設工事(水)27.消防施設工事(消)28.清掃施設工事(清)



一件の請負代金が500万円以上(一式工事の場合は1500万円以上)の工事を請け負う場合、知事または大臣の許可が必要です(営業所が一つの都道府県内にある場合は知事の許可、二つ以上の都道府県にまたがる場合は国土交通大臣の許可)。要するに、リフォームとか500万円未満の小さな工事のみを専門に行っている業者の場合、建設業許可は必要ありませんが、業務が拡大してより大きな仕事を受注するようになったら、知事または大臣の許可を受けなくてはなりません。もし無許可で工事を請け負った場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課せられます。 

このように建設業者に対する規制は他の業種に比べてとりわけ厳しいと言えます。なぜでしょうか? その理由は、請負という特殊な契約にあります。請負の場合、売買のように、実物を見て商品と代金を交換するのではなく、完成まで時間がかかる上、出来上がった建物等が施工主のイメージと異なったりなど、トラブルが起こることがあります。また、代金も高額なため、紛争になった場合は深刻な事態になりがちです。さらに、施工業者の下には、多くの下請け業者が存在するため、支払が受けられなかったり、倒産したりすると、多くの二次被害も発生します。このように建設をめぐるトラブルは、社会的影響が大きいため、その分規制も厳しいのです。

建設業許可申請のためには、次の6つの要件をクリアする必要があります。

  1. 経営業務管理責任者が常勤でいること。
  2. 専任技術者が営業所ごとに常勤でいること。
  3. 誠実性があること。
  4. 財産的基礎、又は金銭的信用を有していること。
  5. 欠格要件に該当していないこと。
  6. 暴力団の構成員でないこと。

以下、それぞれについて簡単に解説します。

  1. 経営業務管理責任者とは
    経営業務管理責任者は、許可を受けようとする建設業に関し、過去5年以上の経営業務管理責任者としての経験がなければなりません。 具体的には、過去に建設会社に勤めていた場合は、常勤の役員であることが必要で、そのことを証明できなくてはなりません(代表取締役である必要はありません) 個人事業の場合は、従業員ではなく、本人が自分でやっていることが必要です。
    また、許可を受けようとする業種以外の建設業に従事していた場合は、7年以上の経験が必要です。 新規に許可を受ける場合、この事実を証明することが重要で、もしその会社が倒産している場合は、証明してくれる人を探さなければなりません。
  2. 専任技術者とは
    営業所に常勤して専らその業務に従事するもので、各営業所ごとに必ず1人の専任技術者を置く必要があります。  また、本社、本店等の専任技術者は、要件を満たせば、経営業務の管理責任者と兼ねることもできます。専任技術者の住所が営業所から著しく離れていたり、他の営業所の専任技術者を兼ねていたりすることは、認められません。
    専任技術者の要件として、高校や大学の関連する学科の卒業及び実務経験、また一級建築士等の資格が必要となってきますが、それは建設業の業種によって異なります。
  3. 誠実性とは
    請負契約に関して、不正または不誠実な行為をする恐れがないこと。
    • 不正な行為・・・・・契約の締結、又は履行に際し、詐欺・脅迫・横領等に違反する行為。
    • 不誠実な行為・・・工事内容、工期、天災等不可抗力による災害の負担等について契約に違反する行為。
  4. 財産的基礎とは
    下記のいずれかの証明が出来ることが必要です
    • 自己資本が500万円以上であること。
    • 500万円以上の資本を調達する能力を有すること。
      申請人名義の金融機関の預貯金残高証明書
      申請人名義の所有不動産などの評価証明など
  5. 欠格要件
    以下の者は、建設業許可を受けられません。
    • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
    • 不正の手段により許可を得たことにより許可を取り消されて、5年を経過していない者。
    • 許可の取消処分を免れるために廃業の届けをして、5年を経過していない者。
    • 不誠実な行為をしたことにより営業の取り消しを命ぜられて、5年を経過していない者。
    • 禁錮以上の刑に処せられ、5年を経過していない者。
    • 建設業法、建築基準法、労働基準法等の違反により、罰金刑に処せられ、5年を経過していない者。

建設業許可の有効期限は5年間で、5年経過する前に、更新の申請をしなくてはなりません。更新の申請は、基本的に新規の場合と同じですが、経営業務管理責任者の証明は、新規の時の複写を使うことができます(つまり、証明者に再度署名・押印してもらう必要はありません)。また、住民票、登記されていないことの証明書、身分証明書は、有効期間がありますので、新たに交付してもらわなければなりません。

さらに毎年、決算期から4カ月以内に、決算変更届を、許可行政庁に提出しなければなりません。

許可を受けた建設業者は、毎年事業年度の終了後(決算日から4ヶ月以内)に、年度内に行った主な工事内容(工事経歴書)及び財務諸表等について、監督官庁に報告をする義務があります。   

その際、以下のような書類を作成し提出しなければなりません。

  1. 変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 貸借対照表
  5. 損益計算書
  6. 株主資本等変動計算書
  7. 注記表
  8. 事業報告書
  9. 納税証明書

この基礎資料となるのが、税理士が毎年作成する確定申告書ですが、税務署に提出する財務諸表と都庁等に提出する財務諸表とでは、書式が微妙に異なるため、そのまま転記するというわけには行きません。また、工事経歴書や事業報告書など、決算変更届のみの書類もあり、全部作成するにはかなりの時間と労力を費やさなければなりません。次項に述べる経審と比べれば、チェックはそれほど厳しくないとは言え、2011年頃から、知事許可業者に対して国交大臣許可業者なみの監督・規制に強化されるという動きもあるため、いい加減な書類を出せば、後々立ち入り検査等の憂き目に遭うことにもなりかねません。

建設業者が、公共工事への入札参加を希望する場合、必ず経審(経営事項審査)を受けなければなりません。経審には、次の三つのステップがあります。

  1. 決算変更届
  2. 経営状況分析
  3. 経営事項審査

 まず、決算変更届は、前項で解説したものですが、その後に経営状況分析が控えているので、いい加減なものを提出すると、経営状況分析機関から修正を指摘され、再度変更届を提出しなければならない羽目になります。その後、分析機関により交付された分析結果通知書を添えて、代理人の行政書士が、都庁等の審査会場に赴きます。ここで、工事請書など必要書類がなかったりすると、「再来」と言って、再び足を運ばなくてはならなくなります。   

経審は、原則、各事業年度の開始から1年6カ月以内に行なわなければなりませんが、事業年度の終了後税理士による確定申告を待たなければ作業には取りかかれませんので、実質の期間は、「半年弱」と言うことになります。さらに東京電子自治体共同運営が行っている電子調達に参加するためには、登録に約1カ月かかるため、有効期限ギリギリに登録しようとしても、受付てくれない場合があります。もし公共事業に比重の高い建設業者が、共同運営の電子調達に参加できなかった場合、甚大な損失は免れません。また、経審では、何が起こるかわかりませんので、余裕のあるスケジュールを立てておかなくてはなりません。


[ケース]

S工務店は、前年度の経審において、「2500万円以上の工事においては、配置技術者と営業所の専任技術者が同一であってはならない」という理由により、2600万円の工事の工事経歴書への計上が認められませんでした。配置技術者が専任技術者と別人であることを裏付けるためには、コリンズ登録が必要でしたが、その時には、有効期限が迫っていたため、コリンズ登録は諦めざるを得ませんでした。その結果、P点は、本来の実績からすると、低いものになってしまいました。 しかし、S工務店の社長は、次年度においては「2600万円の失われた工事実績」を何とか復活させたいと考え、都庁の建設業相談コーナー(ベテランの行政書士が対応している)にも足を運びましたが、「そんなこと不可能だ」というにべもない回答でした。
そこで、ダメ元で、変更届で「失われた工事実績」を工事経歴書に計上し、その上で裏付資料としてコリンズ登録を用意して、経審の審査会場に臨んだところ、今回はこの2600万円の工事が認められました。(きっとP点に反映されているはずです)
形式的には、確かに経審後に取得したコリンズ登録によって、前年度の工事実績を裏付けると言うのは矛盾かもしれませんが、実質的に見れば、ちょっとした記載ミスによって、実際に受注した工事の額が経審に反映されないというのは道理にかなっているとは言えません。この点を、今回役所は見てくれたようです。
このように経審には、法律の文言や手引き書ではなかなか判断できない側面があります。頭だけで考えず、百に一つでも可能性があれば、とりあえずやってみるという姿勢が肝心でしょう。

建設業許可及び経営事項審査を受けている建設業者は、国、都道府県、市町村、官公庁などが発注する公共工事の入札に参加することができます。入札に参加するためには、希望する官公庁に、事前に入札参加資格審査を申請し、入札参加資格者名簿に登録されている必要があります。

最近は、この申請が電子化されているため、ベテランの建設業者の方が戸惑っているケースが多々あります。東京都及び東京電子自治体共同運営の電子調達における代理申請が、近々行政書士によってもできることがすでに決まっており、そうなれば、パソコンを持たない建設業者の方でも、電子入札に参加できるようになります。



( 参考リンク )

建設業法 法令データ提供システム 総務省

建設業法令遵守ガイドライン(平成20年9月改訂) ― 文京区役所 HP









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