内容証明・クーリングオフ



  内容証明書とは、誰が、いつ、どのような内容の文書を、誰に出したかということを、郵便局が公的に証明してくれる制度のことです。正式には、「内容証明郵便」と言います。
  内容証明郵便は、一定の形式に従って作成されねばなりません。また、その文書が実際に相手に届いたことを証明する配達証明といった制度もあります。裁判では、その通知がいつ相手に届いたかを証明しなければならない場合があるので、配達証明付内容証明郵便という形で出すのが一般的です。
  内容証明郵便は、通常、紛争が生じた場合に出しますが、どのような内容であっても、本来自由です。したがって、ラブレターや脅迫状を内容証明郵便で出したとしても、郵便局で拒絶されることはありません。しかし、受け取った相手から常識を疑われることになるでしょう。通常は、裁判を前提とした紛争の前哨戦として、こちらの言い分を相手側に伝えるといった役割を担っています。故に、末文には、もしこの通知に対して○○日以内に返事をよこさなかった場合には訴訟にするぞといった一文を付す場合が多いようです。
  しかし、実際に裁判になれば、経費や負担もばかにならないため、駆け引きの一つとして利用できるとも考えられます。要は、「この問題に関して、自分はこれほど思い悩んでいるんだ(あるいは、怒っているんだ)」というメッセージを相手に伝えることも重要なのです。 そして、これによって、裁判をせずに、ある程度の解決にたどり着ければ、それに越したことはないのです。
  また、作成代理人として行政書士の名前を出せば、専門家に依頼したことが自然と相手方に伝わりますので、自分だけで出した場合に比べ、よりいっそう強い圧力を相手にかけることができます。
  当事務所では、内容証明郵便の文案作成及び発送代行までをサポートいたします。


内容証明郵便を出す主なケース
   債権回収(催告による時効の中断)、時効の援用、売掛金回収、契約解除、クーリングオフ、  賃料請求、立ち退き請求、敷金返還請求、賃金不払・不当解雇、ストーカー、セクハラ、  その他慰謝料請求・損害賠償請求etc.


[ケース]

A設計事務所は、B建築会社の下請けをしていますが、設計の依頼を受け図面を納品したにもかかわらず、代金が1年以上も支払われておりません。B社は上場企業ですが、A設計事務所の間にC設計事務所ともう一つ下請を介在させ、C設計事務所が発注したのだから自分は知らないといったふざけたことを言っています。しかし、実際には、B社の営業部長から直接指示を受けているのであって、C設計事務所が発注したというのは単に形式的な話にすぎません。さらに悪いことに、建設業界の悪しき慣行として、書面による契約を交わさない場合が多く、本件もその例に洩れなかったため、B社の営業部長は、「払うつもりはない」と強気に出てきたということでした。
そこで、A事務所を差出人として、当事務所が作成代理した内容証明書をB社に送ったところ、送達された当日に、B社の営業部長が血相を変えて電話をかけてきました。いわく、会議でなんとかみなを説得するから、8割で勘弁してくれというものでした。A設計事務所も、早くこの問題を解決したかったため、この提案を飲むことにしました。
しかし、あれほど強気だったB社の部長が、たった一本の内容証明で、なにゆえ態度を急変させたのでしょう。それは、建設業法に精通した行政書士ならではのテクニックがあったのです……。

訪問販売などで強引な勧誘を受け、自らの意思がはっきりしないままに申し込みにサインをしてしまい、後になって頭を冷やしてから後悔することがあります。この場合、申し込みの撤回や契約の解除をすることができます。この制度をクーリングオフと言います。

 クーリングオフの効果は、下記の通りです。

  1. その契約は無かったことになる。
  2. 損害賠償金や違約金を販売業者に支払う必要はない。
  3. 頭金や申込金を支払ってしまった場合でも、その金額を返してもらえる。
  4. 商品を受取り済みの場合、その引取費用は全て販売業者の負担となる。

 クーリングオフは、消費者にとっては救済制度ですが、販売業者にとってはきわめて手厳しい措置ですので、常にできるというわけではなく、業種・期間等に種々の要件が設けられています。 消費者被害にあった時は、通常各区に設置されている消費者センターに相談する場合が多いと思います。消費者センターに相談した場合、業種・期間等の要件に問題がなければ、解約通知の雛型をファックスで送ってくれ、特定記録郵便で郵送するように勧められます。しかし、これでも返金してくれないような悪質な業者だった場合、消費者センターには立ち入り調査するとかいった強力な権限が与えられていないため、それで終わってしまいます。その点のことを考えれば、業者への解約通知は、内容証明郵便で行うことが勧められます。 また、行政書士は、業者との直接交渉の代理人にはなれませんが、より有利に問題解決をはかるべくお手伝いさせて頂きます。


[ケース]

かつて、豊田商事事件といって、高齢者の訪問販売によって、金を売る詐欺商法がありましたが、最近は、豊田商事の例とは逆に、高齢者の訪問販売によって、金を購入する悪徳商法が増えてきており、これにひっかかったという親族からクーリングオフの依頼を受けました。
本件では、高齢者が自宅のタンスにたまたまあった金の延べ棒(インゴット)を時価の半値以下で、訪問販売のB社に売ってしまったのです。しかし、当の本人は、高齢のため事態が把握できず、「こんなにお金が入ったよ」とホクホクと喜んでいるそうです。契約書も名刺もなかったのですが、わずかな手掛かりからB社の所在地を突き止め、また、事前に、訪問調査しました。B社は本社が大阪にあり、東京支社も池袋の一等地にあったので、そう無法もできないだろうと予想しました。

その上で、契約解除通知を内容証明で送り、単なる契約解除でなく、文面にも警察沙汰にするぞといった含みを持たせました。それが功を奏したのか、翌週には、同社の営業マンが二人でやってきて、半値以下で買い叩いた金の延べ棒を購入金額で買い戻すことができました。その時、先日のインゴットはすでに売却してしまったので、同じ重さのものを持ってきたと言われました。親族の者も、ここまで来て悪事は重ねないだろうと判断し、それを受け取りました。その後、田中貴金属でそのインゴットを鑑定してもらったところ、本物であることが確認できました。




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