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著作権の世紀(福井健策、集英社新書)

2010-09-21
その他
 前著「著作権とは何か」(集英社新書)についても言えるが、法律を解説した本にしては目茶苦茶面白い。著者は気鋭の弁護士であり、この分野の第一人者である。NHKの「視点論点」にもちょくちょく登場するので、ご存知の方も多いと思う。
 面白い理由の一つに、時事問題に言及している点がある。例えば、森進一と作詞家の川内康範との間の「おふくろさん」騒動や、松本零士と槇原敬之の間で争われた「夢は時間を裏切らない、時間も夢を決して裏切らない」の盗作問題が取り上げられている。「おふくろさん」騒動ついて、マスコミでは、森進一に対する道徳的非難ばかりが目立ち、法律的問題としての整理が十分になされてこなかったような気がする。本書を読めば、この辺のことはすっきりする。
 また、番組ライブラリー等アーカイブの問題についても論じられている。現在、膨大なアーカイブが倉庫の中に眠っているにもかかわらず、その一部しか公開されないのは、著作権の問題が絡んでいるからなのだそうだ。その中で、昔NHKテレビで人気だった、平賀源内を主人公にした時代劇「天下御免」のフィルムがなくなってしまったことについて嘆いていた。私も「天下御免」には夢中になった口なので、この嘆きがよくわかる。この辺の世代的共感も、私にとってとりわけ面白い理由の一つなのだろう。
 著作権とはエンターテイメント作品には常につきまとう問題だが、著者は昔演劇青年だったらしく、元々この分野への関心が高かったのだろう。このエンターテイメントへの造詣の深さが、法律専門書をして娯楽作品に仕立てあげる技量の源となっているに違いない。ただし、ストーリーテラーの術中にはまり、一気に読み切ってしまうと、肝心の法律知識が身に付いていない恐れがあるので、要注意!


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