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2014-10-05
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 もう一つ事例を紹介しよう。
 筆者が長年親しくお付き合いさせて頂いたT氏が先日、ガンで亡くなられた。享年86歳であった。ガンの宣告を受けていたので、亡くなる少し前に筆者に遺言で死後の事務を託された。T氏には相続人はいたのだが、あいにく親子関係が疎遠であったため筆者が引き受けることになったのである。死後の事務とは、具体的には、葬儀の執行、遺品の整理、債務の清算、などであった。
 T氏の部屋を片付け、遺品を整理しながら、請求書等を掻き集め、預っていた遺産の中から払うことにした。すでに大きな債務は弁済済みであったので、残りは家賃とか電気代など、月々の固定費や買い物の未払い分であった。その中にソフトバンクの携帯電話料金が含まれていたので、早速最寄りのショップに行き、事情を説明して清算しようと思った。
ところがショップの担当者によれば、死亡による契約解除の場合、死亡記載の戸籍謄本(しかも原本で)がどうしても必要だと言うのだ。ご存知ない方も多いと思うが、戸籍謄本の申請ができるのは、親族か債権者に限られている。他人である筆者が、交付の申請をしてもけして受け付けてくれないのだ。しかし、筆者は葬儀の執行を行っていたので、死亡診断書の写しなら持っていた。そこで、それで代用できないかと言ったところ、やはりダメだと言う。
筆者は少々カチンと来て、単身高齢者が大きな社会問題となっている中、相続人以外の者が契約を解除するという事態は、当然予測できるはずだ。故人の遺志に従って、未払金を支払おうとしているのに、それを拒否するとはおかしいではないか。
しかし、担当者は理由も示さずただ「できません」の一点張りである。これでは埒が明かないので、「じゃ、踏み倒しますからね」という捨て台詞を残して、その場を後にすることにした。
事務所に戻ってから、個人商店に同じ用件で電話を入れたところ、筆者と故人との関係について問われることもなく、感謝されつつ清算に応じてくれた。商人としてこの方が自然な振舞いなのではないか。金を払うと言っているのに困った顔をする方が異常な振舞いなのだ。そして、この異常さをもたらしているのが、実はコンプライアンスなのである。
そのコンプライアンスに合理性があれば、仕方がないとも思う。しかし今回は、それも疑わしいものだと考えざるを得ない。誰でも経験したことがあると思うが、携帯電話の解約は、通常電話一本で済ますことが可能だ。電話口に出ているのが本人か一応聞かれるが、口頭で答えるだけでよい。今回も、電話をかけ、本人になり済まして解約することもできたのだが、それはあえてしなかった。そして、生きている者の本人確認はこのようにいい加減なのに、死者の場合は、戸籍謄本の原本でないと受け付けず、死亡診断書でもダメだいうのではあまりに厳格すぎ、公平・均衡の観点からもバランスを欠いているのではないか。それによって、本人に不利益が生じるというのならともかく、たとえ誰かが死亡に関して虚偽の届け出をしたところで、重大な損害が生じるとは考えにくい。
また細かい点になるが、原本しか受け付けないという点も気に入らない。死亡すると、本人の銀行口座が凍結されるが、それを解除するための手続の際も、戸籍謄本は、原本還付と言って1通を使い回しすることが認められている。たかが電話の解除にすぎないのに、原本1通をまるまるよこせというのは非常識のそしりを免れない。
結局、筆者は、ショップで言ったようにソフトバンクの支払をしないことに決めた。T氏の部屋は貸主に明渡したが、郵便物の転送設定はしていたので、その後もソフトバンクからの督促状が毎月送られてくる。宛先がT氏になっているので、まだ、T氏が死亡したことを知らないらしい。もし死亡が確認されていたら、宛先は「T様ご家族様」となるはずだからである。しかし、教えてやらないことにした。筆者には支払義務はないし、相続人はすでに相続放棄の手続きをしているので、請求先はどこにもなく、契約書も空手形になっている。よって督促状はすぐにゴミ箱行きなのだが、いつまで続くか楽しみである。

今回、インターネットで、ソフトバンクの死亡解約のところを見てみたが、「ご来店頂く方」として、「ご契約者様の法定相続人」としか記載されていない。これは明らかにおかしい。そもそも民法では、遺言による相続(任意相続)が原則で、法定相続は例外とされている。遺言により法定相続人以外の者が相続人になった場合、当然こういった死後の事務も引き受けることになるはずだが、任意相続人が手続をできないというのでは、理論的にも誤っている。また、平成25年版の「高齢社会白書」によれば、高齢者世帯のうち一人暮らしの高齢者の割合は23.4%に達している。このうちすべてが相続人がいないと言うわけではないが、本件のようにたとえいても、家庭の事情により疎遠になってしまった場合もあるだろう。こういった現実を全く考慮に入れていないと言うのは、大企業として失格であり、呆れるより他ない。
ちなみに他の携帯電話会社ではどうなっているのか、調べてみた。
au
死亡時解約の代理人にとして、「親権者・未成年後見人・成年後見人・契約者ご家族・施設関係者」となっている。
docomo
「本人確認の書類」とあるだけで、代理人又は来店者の資格のようなものは特に明記されていない。但し、「ご来店される方の確認書類」として「葬儀の案内状や死亡診断書など死亡の事実が確認できるもの」となっている。
イーモバイル
公式HPには、死亡時解約に関する記載がない。その代わり、「死亡時解約」で検索すると、イーモバイルへの苦情がたくさん出てくる。やはり代理人による解約ができなかったり、解約金に関するトラブルが多発しているようである。

筆者は、これらの情報を得て少しホッとした。少なくともauとdocomoにおいては、家族以外の代理人が解約することが想定されていたからである。当り前と言えば当り前のことだが、ソフトバンクが他社に比べ思慮が足りないということが、これで明らかになった。
規約を見た限りでは、docomoが一番スムーズに事が運びそうである。「死亡の事実が確認できるもの」として「葬儀の案内状や死亡診断書」となっているが、これは今回のケースでは揃えることができたからである。後は、運用面でどれだけ柔軟に対応しているかであり、もし上記の書類がない場合、戸籍謄本しか受け付けないとすれば、やはり同じ問題につきあたってしまうことになる。
また、auでは死亡時解約の代理人としていろいろ例示されているが、今回の筆者のような立場は明記されていない。もしこれが限定列挙で、一切の例外を許さないとすれば、紛糾することになったであろう。

今回の問題で、もう一つ気にかかる点がある。それは、店員と揉めた時、筆者の「じゃ、身寄りのいない単身高齢者の場合どうやって解約するんだ?」という問いかけに対して、その者は全く合理的な説明ができないにもかかわらず聞く耳を持たず、そして上司や本社のコンプライアンス部門に相談をする様子を見せなかったことである。要するに、合理的に明らかにおかしい点があっても、運用面で補ったり、あるいは不備を改訂するような仕組みができていないものと推測される。この後、本件に関して上司や本社に伝えた可能性が全くなかったとは言えないが、恐らくはなされていないであろう。ちなみに、この一件があってからすでに半年以上経つが、先程見たようにソフトバンクの公式HPには、相も変わらず「ご契約者様の法定相続人」としか書かれていない。
それと、イーモバイルに関してだが、解約金のトラブルについては、以前から問題になっていたようである。実は、筆者はイーモバイルの初期の頃の利用者であり、解約時に他社に比べて法外な額を請求されたことがある。その頃は、イーモバイル・ショップが都内に赤坂にしかなく、隣の席で、外国人が同じ理由で顔を真っ赤にして怒っていたことが思いだされる。ちなみに、「イーモバイル 解約」で検索をかけても同様の被害事例は出て来ない。恐らくSEO対策で、検索順位の上位に上がらぬよう小細工を弄したのであろう。イーモバイルの場合、高い解約金を取ると言うことは、会社の利益と直接かかわってくることなので、たとえ多少の悪評が立っても、この方針は変えられないのであろう。
しかし、ソフトバンクの場合、死亡時解約の規定をdocomoと同じように改訂したところで、利益を損ねることはないどころか、その分処理がスムーズに運ぶので、メリットの方が多いはずである。それでも改訂されないと言うのは、一度決めた規約は容易に変えられないというコンプライアンス自体のもつ硬直性に一因があるように思われる。法律と同じように思う向きもあるかもしれないが、法律の場合、通達がしばしば発布されるので、むしろ企業より柔軟なのではないかと思う。そして、ソフトバンクのような大勢の人々にサービスを提供する大企業におけるコンプライアンスが、かように柔軟性に欠いたものであるとすれば、国民への影響も計り知れないものがあるはずだ。

次に、このような事態を改善するための方策について、私見を述べていきたい。


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