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みずほ銀行との押し問答

2014-10-01
その他
先日、うっかり銀行のキャッシュカードを失くしてしまった。実は、同じカードで3回目の紛失なのだが、前回と前々回は残高が大した額ではなかったのでしばらく放っておいたところ、発見されたという連絡が入り、事なきを得た。今回は、若干残高があったので、すぐにみずほ銀行のコールセンターに電話を入れ、紛失届出とキャッシュカードの停止を依頼することにした。いったん再発行の手続をすることになれば、その後、たとえ発見されたとしても、そのカードは無効になってしまう。また、再発行によって銀行の口座番号は変わらないが、クレジットカードの番号は変更されることになり、それに伴ってネットショッピング関係の登録も変更しなくてはならなくなる。したがって、届出を出すか否かは、かなり重要な決断となってくる。申請後も再発行の手続をストップできるなど、もう少し融通がきかないのかと思いたくもなるが、これは失くした者が悪いのだから仕方がない。
コールセンターに電話を入れた翌日、再発行の手続きをしに、口座を開設した支店に行った。受付で申請をする際、筆者が一番に気にかかっている点についてまず尋ねてみた。
筆者は、現在高齢の両親と同居しているが、特に母親は骨粗鬆症を患い、二度も骨折している。普通、このような場合寝たきりになるのだが、今でも何とか歩行だけは維持できている。しかし、また骨折したら、今度こそ寝たきりになる可能性が極めて高い。そのため、筆者としては、なるべく外部と接触しないで済むよう細心の注意をはらっているのだ。今回、もし筆者あての新しいカードが書留で届けられた場合、配達員がインターホーンを押せば、母親は間違いなく門のところまで出てくるであろう。そして、この門には、外出できないよう鍵がかかっているのだ。骨折のうち一度は、一人で外出した際に起こしているからだ。その際、郵便物の受け取りだけでなく、受領の押印もしなければならないとなると、自分の背より高い門越しに押印するためには、不安定な姿勢を強いられ、その際に転倒する可能性が高い。
以上の事情を窓口の女性行員に説明し、筆者の事務所宛てに送ることはできないかと相談してみた。しかし、それは不可能だと言う。ならば、せめてカード再発行後電話を入れてくれれば、筆者がここに立ち寄るので、そうすれば本人確認もできるので問題なかろうと申し入れた。すると、彼女は、
「このカードはクレジット一体型ですか?」
と尋ねた。筆者が頷くと、
「カードはユーシーカード会社から送られてくることになるので、そちらに確認を取らないとなりません。少しお待ちください」
と言って席を立った。
銀行だけのカードなら筆者の要望は通ったらしいのだが、クレジット一体型だとそうも行かないらしい。2~3年前、別の銀行で、同様の申出をしたことがあり、その時は上司が出てきて、「そういう事情なら何とかします」ということで決着したことがあった。しかしその時のカードは、クレジット一体型ではなかった。
しばらく待たされた後、ユーシーカード会社に連絡したが、やはり書留以外の方法で送ることは不可能だということであった。これを聞いた途端、筆者は頭に血が上ってしまい、以下のようなことをまくしたてた。
そもそも、書留で送る目的は何なのか。本人確認なら、さっきも言ったようにこの支店に送ってもらい、その後こちらに赴き、身分証を提示すれば足りるではないか。その方が本人不在時に家人が受け取るよりよほど正確ではないか。また、居住確認が目的なら、例えば宅配便を使えば、時間指定ができるので、その時間に自分がいるようにすれば受け取ることができるはずだ。代替手段がないのなら仕方がないが、あるにもかかわらずそれを行わず、そのためにこちらがリスクを負うというのは到底納得できない。
また、この時、もし転倒して骨折したら訴えるぞとも言った。仕事のせいか、裁判と言う言葉を4回ぐらい口走った気がする。これは全く当てがなかったわけではなく、「安全配慮義務」という言葉が頭に浮かんでいた。後で調べてみると、安全配慮義務とは、もともと労働法上使用者に課せられた義務であったが、その後、一般の契約にまで適用範囲が拡大され、判例として、コンビニエンストアで掃除して床をピカピカに磨いたことによって転倒したケースなどが挙げられていた。これなどに比べれば、今回の主張の方が遥かに説得力があり、しかも事前に事情を説明しているのだから、もし事故が起きて裁判になった場合、勝てる可能性が高いという気がしてきた。ちなみ、安全配慮義務は民法の信義則と見なされるので、約定に明文があるかどうかとは関係がない。
それはともかく、かなり激昂して詰問したので自分の手に余ると思ったのか、その行員は別の担当者(やはり女性)を呼んできた。その者はとても丁寧に応対してくれ、もう一度ユーシーカード会社に連絡してくれるとのことだった。
再び待たされてから彼女が現れた時、申し訳なさそうな顔をして、やはり書留以外の方法で送ることはできないという言葉を聞かされた。
この時は筆者も冷静さを取り戻していたので、静かな口調で、
「じゃ、私が直接話しますので、先方の電話番号を教えて下さい」
と言った。
筆者がその場でユーシーカード会社に電話をしたところ、折り返し電話するとのことだった。そして、その電話が来ると、問題はあっけなく片付いた。要するに、郵便局留という形で、対処するというのだ。担当者の口ぶりでは、通常とは異なった方法で対処するということだが、要するにクレーマー枠に入れられたということであろう。ちなみに、この時、筆者は強引な交渉は全くしてない。
 
みずほ銀行とユーシーカード会社はもちろん提携関係にある。いわば内部の人間同士が話し合ってもどうにもならなかった問題をあっさり解決できたことになるが、何もそのことを自慢したいわけではない。それどころか、今回のケースに関して何とも釈然としない後味の悪さを感じている。激昂してまくしたてた時も、言っていること自体に誤りがあったとは思っていない。書留で送ることによってリスクが生じるのなら、他の代替方法を選択するのが一番合理的ではないか。このことをコンプライアンス部門に伝えフィードバックしてもらい、今後同様のケースに遭遇した時の参考にしもらえれば、押し問答した甲斐もあるというものだ。しかし、単にクレーマー枠のような形で処理されたというのは、はなはだ心外であった。
郵便局留では、本人確認は中途半端で、居住確認については全くできないことになる。書留で送ることの目的は、本人確認か居住確認かのどちらかのはずで、ユーシーカードの担当者に聞いた時も、「両方です」と答えていた。ならば、先ほども述べたように他に代替手段はあるにもかかわらず、それをしようとせず、このような形で問題の解決をはかるというのはあまりに安直で、単に臭い物に蓋をされたとしか言いようがない。
 そして、これは、このコラムで度々指摘しているコンプライアンスの本質的問題とも重なって来る。コンプライアンスは一般的に合理的方法によって解決をはかるものだが、やはりどうしても想定外の事態に遭遇してしまうことがある。その時には、合理性が全く放棄されてしまうことがあるのではないか、ということである。この合理性の放棄ということの意味は、今回のようにクレーマー枠で処理するという方法以外にも、「これは決まりですから」と言って、理由も示さず頑なに拒否することも含まれる。筆者は職業的クレーマーもこの目で見たことがあるので、理があればすべての顧客が納得してくれるなどという無邪気な立場は取らない。しかし、それでも理があればかなりの人々は納得するだろうし、非合理な説明によって怒りに火をつけモンスター化してしまう場合だってあるはずだ。故に、合理性の放棄は、コンプライアンスにとって命取りなのである。この辺の問題について、もう一つの事例を通じてさらに掘り下げて考えてみたい。

 その翌日、警察からキャッシュカードを拾得したという通知が、支店を経由して郵送されてきた。一応、警察署に取りに行ったが、時すでに遅しで、カードはそのまま廃棄されることとなった。郵送ということは一日のタイムラグがあるので、昨日の時点でカードの拾得はわかっていたはずであり、すぐに電話してもらえれば、押し問答も不要だったということになる。このような連絡が緊急を要することは、常識で考えればわかることであり、コンプライアンス以前の問題であろう。そして、顧客にとって肝心のことがなおざりされている以上、枝葉のことをいくら言われても、けして納得することはできないのだ。コンプライアンス依存が人間の判断能力を曇らすのではないのか……。そんな思いが拭えなかった。



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