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アメリカンドリームという悪夢

2010-02-17
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 マスコミは連日連夜、小沢一郎の政治裏献金疑惑の問題でもちきりである。しかし、海外では、世界経済の大転換を予感させるような事態が起こっている。オバマ大統領による金融規制法案がそれだ。
 リーマンショックからわずか一年、ウォール街では再び強欲資本主義が息を吹き返し、証券会社ではまたぞろ高額なボーナスが支払われている。あれだけ世間を騒がせておきながら全く懲りない面々だが、これに対してアメリカ市民の怒りの声が沸き起こっている。リーマンショックのお陰で多くの企業が倒産し、失業者が増えたというのに、その張本人たちが高額な報酬を得ているというのだから、頭にくるのは当然であろう。そんな矢先、オバマ大統領は、今回の法案をぶちあげた。新聞では、「ウォール街への宣戦布告」などという、センセーショナルな見出しがつけられていた。
 金融規制法案の骨子は、次のようなものである。

①  銀行、または銀行を傘下に持つ金融機関によるヘッジファンドおよびプライベート・エクイティ・ファンドへの投資や出資、保有を禁止。 
②  預金だけでなく、それ以外の資金調達源も考慮に入れ、金融セクター全体に対する銀行の相対的な規模に制限を設ける。預金に関しては、特定の銀行にリスクが集中するのを防ぐため既に上限が設定されているが、現行規制では他の資金源に制限はない。 
③ 銀行の自己勘定取引を禁止。ただ、ホワイトハウスのある当局者によると、マーケットメーキングの一環としての自己勘定取引は認められる。
 
 これによって、銀行による投資業務が厳しく制限されることとなる。銀行が投資業務も行うというのは、たとえて見れば、両替商が丁半博打の胴元も兼ねるような話なので、禁止されて当然である。しかも、あまり規模なの大きな金融機関を潰せないという理由から、時には公的資金が投入されたりもする。この例で言えば、胴元の負けが込んできたらお上が助けてくれる、という話だ。
 そもそも1933年のグラス・スティーガル法により、かつては商業銀行が投資業務をすることは禁じられていた。それが1999年廃止されたことにより、銀行と証券会社の間の境界がなくなり、今日の事態を招いているのである。
 遡ればこれは、1986年のイギリスサッチャー首相によるビッグバンに始まり、日本でも、1996年の橋本内閣のときに受け入れられ、規制緩和の名のもとに、銀行と証券会社等の垣根が取り払われている。
 そしてこのような暴挙が、市場原理主義やグローバルスタンダードとして世界中を席巻したのである。よくグローバルスタンダードは、アングロサクソンの思想などと言われるが、中心になった国はイギリスとアメリカであり、どちらも覇権国家である。うがった見方をすれば、金融は、かつての覇権国が失地回復するための切り札だった言えなくもない。アメリカ市民も、「強いアメリカ」を期待する気持があったからこそ、ウォール街の陰謀にまんまと乗ってしまったのである。
 もうひとつ、投資には一獲千金のチャンスがあり、アメリカンドリームの象徴でもあった。しかし、その夢は結局悪夢であった。アメリカは、1パーセントの富裕層と99パーセントの貧困層から成りつ格差社会になってしまったが、それを加速したのが、市場原理主義やグローバルスタンダードに他ならないのだ。
 市場原理主義者は、神の見えざる手などというが、市場の神とアダム・スミスの神は本質的に異なる。価格決定において働くアダム・スミスの神は、民衆の集合意識が反映されたものだが、市場に参加する人々はごく一部の富裕層あるいはその代理人たる証券会社や機関投資家である。市場の神は金持ちの味方なのだ。

 金融規制法案に対しては、ウォール街からポピュリズムなどと反発の声が出ているようだが、この法案にはノーベル賞受賞者のスティグリッツ氏も賛同しているのだ。また、超大物ヘッジファンドのジョージ・ソロス氏も基本的にはこの法案に賛成だという。
 そして世界は、グラス・スティーガル法が廃止される以前にまで、時計の針を巻き戻すべきなのだ。この間、多くのアメリカの優秀な頭脳が証券業界に流れてしまった。相場はケインズの言う美人投票であり(自分が美人と思う相手にではなく、大勢の人々が美人と思う相手に投票する)、金融工学などと言っても所詮丁半博打の延長線上でしかない。理系の人々は、本来の科学技術分野でこそ、その才が発揮されるべきなのだ。
 そして、もしこの法案が成立すれば、その影響は世界に及ぶであろう。フランスのサルコジ大統領も、すでにダボス会議で賛意を表明し、各国が協調して規制を強化すべきであると述べている。日本にとっても重大な影響があるはずなのだが、鳩山首相は、小沢氏や自分の問題でそれどころではないらしい。


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